よりシンプルでエネルギー効率の高いシステムを作るには

部品の数を減らし、よりシンプルでエネルギー効率の高いシステムを作る方法を、ボイラー給水システムを例に用いて解説します。

産業分野では、必要以上に複雑に作られたシステムを多く見かけます。実際、よりインテリジェントなアプローチを適用することで、部品の数だけでなく消費電力も少ない、シンプルなシステムに作り変えることが可能であることが多くの研究により証明されています。この個別指導では、そのプロセスを解説します。また、ここでは蒸気ボイラー給水システムを例に用いています。

まず、標準的なボイラーシステムの概要について見ていきましょう。ボイラー内の水位は定速ポンプと給水弁を用いて制御されており、ボイラー内の水が十分にあり弁が閉じている場合はバイパスループによって水を脱気装置に戻す仕組みになっています。また、給水ポンプ内の水は最低流量以上に維持されます。このタイプの運用システムは非常に安定性が高く、蒸気品質にも優れていますが、いくつかの弱点もあります。

 例えば、給水弁は年に1回以上メンテナンスが必要であり、当然ながら費用が発生します。また、給水弁によって生じる2~5 barの圧力損失を補うためにより大きな圧力が必要になり、最適な効率性を確保するには大きめのポンプを選ばなければならなくなります。これにより、初期費用のみならず、消費電力の増加による運営費の拡大にもつながります。さらに、当然ながらバイパスループを使うことでも初期費用と運営費が高くなってしまいます。幸いにもこのタイプのシステムをよりスマートかつシンプルに変身させる方法があります。   

定速ポンプのかわりに変速ポンプを設置すると、ポンプに内蔵されている制御機能が水位を直接制御できるため、給水弁とバイパスループが不要になります。ボイラーから水位に関する信号を受け取ったポンプは、蒸気消費量に応じて自動的に速度を調整します。費用がかさむ給水弁とバイパスをなくすことができるのは大きなメリットです。これが本当のウインウインです。また、給水弁による圧力損失がなくなることから、ボイラー内に水を送り込むのに必要な圧力をより小さなポンプでも十分に作り出すことができるようになります。  

実際に給水弁による圧力損失がなくなり、部品の数が減ることで、最新式のスマートポンプの購入にかかる費用はすぐに相殺できてしまいます。

これは、CR15-14ポンプ2台を使った産業用ボイラーシステム (1台運転、1台スタンバイモード) の標準的な負荷プロファイルの計算です。

ここで、従来型のシステムと新しいシステムの計算を比較してみましょう。機器費用を合計すると…新しい機器の購入による追加費用は640ユーロになります。そして、負荷プロファイルに基づいて年間運営費を計算すると…新しいシステムによる経費削減効果は年間3807ユーロになります。

よって、資本回収期間は2ヶ月です。さらに年間28,000kWh以上の電力を節約できます!

ここで得られたデータをもとに、年間運営費の内訳を見てみましょう。こちらに示されているように、新しいシステムのメンテナンスと運営にかかる年間費は従来型システムの半分になっており、スマートなシステムを導入することによるメリットを物語っています!

最後に、インテリジェントなボイラー給水システムの機能である「曲線補正」と「最低速度で停止」について解説したいと思います。

曲線補正とは、より安定した制御を可能にしてくれる機能です。ボイラーの静圧が原因で曲線が非常になだらかなボイラー給水システムでは、ポンプの種類によってはポンプ制御が不安定になるリスクがあります。曲線補正はボイラー給水やそのほかの用途に必要不可欠な安定したポンプ曲線を作り出します。

また、インテリジェントボイラー給水システムには蒸気の消費がなくなると運転を停止する機能が備わっています。標準的なボイラーではポンプが定速で連続運転するのに対し、インテリジェントボイラー給水システムは最低速度での運転時間が一定の数値に達すると自動的に運転を停止します。すなわち大きな省エネ効果がある機能です。

このほかにも、インテリジェントボイラー給水システムにはデューティー/スタンバイ、デューティー/アシスト、設定点の影響などたくさんの機能が搭載されています。

これまでの解説で、インテリジェントボイラー給水システムは従来型の複雑なシステムよりもエネルギー効率が高いことをおわかりいただけたと思います。必要のない部品をなくすことでサービスにかかる時間も経費も削減することができるため、長期的なソリューションとして明白です。  

コース概要

モジュール
モジュール: 3
完了時間
完了時間: 21 分
難易度
難易度: 上級