廃水分野における課題とs-tubeインペラ

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廃水分野における課題とS-tube®インペラ
By Justyn Barnes

概要

現代の廃水システムは、上昇し続ける水道料金や環境、行政など様々な要素に配慮して設計することが求められています。このタスクでは、革新的なデザインを誇るグルンドフォスのS-tube®インペラが様々な問題にどのように対処しているのかを学びます。

グルンドフォスの S-tube®インペラは電力や輸送流体の消費量を減らしつつ、移送する廃水の容量や種類、距離を拡大できるようデザインされています。

2012年にグルンドフォスが発売した革新的なS-tube®インペラの基本構造は、実は何十年も前からポンプ設計者が図面を完成させていました。ただ、このインペラデザインを商品化できる廃水ポンプメーカーがこれまでいなかったのです。当時は移送する廃水の容量や種類が比較的少なかったため、水や電力の消費量といった細部は、サービスプロバイダーにほとんど考慮されていませんでした。

過去20年間で様々な要素が変化したことで、やっとS-tube®のデザインが市場の需要と一致するようになってきたのです。これまでに、環境に対する認識の向上や政府による新しい法律・指令、水や電力、廃水移送のコスト増加といった変化がありました。


1. 現代の水道光熱業界が直面する課題

水道光熱業界が廃水移送の分野で今日直面している主な課題は、どれも密接に関連し合っています。その概要は次の通りです:

  • 水や電力料金の引き上げと政府による規制の厳格化(水や電力の消費に対する環境税など)
  • 水と電力の消費量の減少
  • 現代の廃水は流体の割合が少ない

水道光熱会社が廃水管理へのアプローチを変える主な原因となったのは、水道料金が上昇し続けていることです(図1を参照)。その結果、消費者が水の消費量を削減したため廃水の性質が変わり、固形物の割合が以前よりも大きくなりました。

また、政府によって規制や規格、指令が制定されたことでも状況がより複雑になっています。例えば、ポンプステーションの設置に関する欧州規格EN 752-6:2008の第5項では、ポンプの設置は「エネルギー消費量」、「運転および保守に関する要件」、そして「環境への影響」などの要素を考慮して「計画、設計する」べきであるとされています。

消費に対する規制が厳格になったことに加え、電気料金がますます高くなっていることで、より効率の良い廃水移送システムに対する関心がますます高くなっています。様々な節水テクノロジーが登場したことで新しい問題も出てきました。例えば、水消費の効率に優れたトイレから出る排水は流体が少なく、よって配管の中で詰まりを起こすリスクが高くなります。従来の廃水ポンプを使用すると、以下のような設計上の弱点が原因でさらに詰まりやすくなってしまいます:

  • 前縁部分に廃棄物が引っ掛かりやすい
  • 配管に湾曲部が存在する
  • 切削機構
  • 通路の大きさが小さい 

「廃水移送では、主に2つのグローバルな変化が起きています」と、フランスを代表する上下水道会社で、多国籍企業スエズ・エンバイロメントに属するリヨン水道の技術サポートエンジニアを務めるMaurice Martaud氏は言います。「最初の課題は、消費者の社会的行動が変化していることが原因となっています。水の消費量を最小限に抑える様々な節水技術の設置が増えてきた一方で、廃水回収システム内に排出される繊維質の物質が増えてきてしまっています。こういった変化によって廃水に混じって運搬される固形物がより濃くなり、移送しづらくなるため、廃水ポンプの水力機構と配管の両方にとっては厳しい運転環境です。「2つ目の課題は、重力式下水道やポンプ、加圧主管の詰まり防止を目的とした、回収システムの監視への需要が高まっていることが焦点になっています」とMartaud氏は言います。「脂肪分や沈殿物、マクロ汚染物質が混じることで起こる詰まりはますます深刻な問題になっており、メンテナンス費の拡大につながっています。よって、詰まりの原因となる傾向をできる限り事前に発見することが重要なのです」


2.異なるインペラ、異なる問題

このような変化と市場からの圧力に応えて、業界では廃棄物管理に可能な限り集中管理を用いる傾向が見られてきました。また、電力を節約する手段として変速ポンプを使う手法も以前より普及してきました。しかし、流量が減ることで廃水の流れも遅くなることから、システム内で詰まりが起きるリスクが高くなり、効率性と寿命に悪影響が生じます。 

このように、廃水ポンプの設計は困難な問題になっています。以前よりも大量の廃棄物をより長距離にわたって移送できるだけでなく、水と電気の消費量を減らし、設置後のメンテナンスがほぼ不要になるような設計を実現しなければなりません。

これまでに、信頼性と水力効率の向上を求めて、ボルテックス型やセミオープン型、クローズド型、ハイブリッド型など、様々な種類の廃水インペラが開発されてきました。

「また、お客様の多くが高額な追加装置を購入するよう求められています」と、グルンドフォスのグローバル・プロダクト・マネージャー、Mikael Nedergaardは言います。「こういった追加装置はその中を通過する廃水の誘導や削減、処理を行うことが目的ですが、長期的な信頼性の点では顕著な改善は実現できません」


3.S-tube® インペラ:妥協ゼロ

EN 752-6:2008 には、ポンプに不可欠な特性として、「効率性の最適化」と「詰まりを起こすことなく固形物を通過させる」ことが挙げられています。しかし、Mikael Nedergaardは「しばしばお客様はこの2つを両立することはできないと信じ込まされている」と言います。グルンドフォスの廃水ポンプに搭載されているS-tube®インペラはこの固定観念を覆し、水力効率が高いだけでなく通路断面積が大きく、詰まりが起きにくいデザインになっています。

「S-tube®のスムーズなデザインが前縁部分のあるインペラよりも優れている点は、廃水内の固形物がひっかかり、詰まりの原因となる突起物がないことです」グルンドフォスでグローバル WW フルイド&メカニクスを率いるFlemming Lykholt-Ustrupは語ります。「クローズド型のS-tube®は正面と背面プレートが特殊な形状になっており、回転しているインペラと静止しているポンプハウジングとの間の空洞に流れ込む漏洩流を最適化します。

S-tube® の広々とした内径はどの位置でも均一になっているため(図2参照)、輸送流体の少ない現代の廃水でも詰まりにくくなっています。

「その結果水力効率が向上し、エンドユーザーの消費電力を下げることができます」とFlemming Lykholt-Ustrupは言います。「さらに、前縁部分がないことで、キャビテーションが最も起きやすいうず巻ポンプ内のNPSHが大幅に下がるというメリットもあります」


4.包括的なアプローチ

Europump と Hydraulic Instituteによる著書『Pump Life Cycle Costs:A Guide to LCC Analysis for Pumping Systems』の中で発表された論文では、ポンプの初期投資費用はほとんどのケースでライフサイクルコストのうち5%以下であることが示されています。最も大きな要素である電力消費量は全コストの85%を占めており、サービスコストは約10%と推定されています。

よって、一部の大手メーカーがポンプシステムを最適化するには包括的なアプローチが必要だと気づいたことは驚きではありません。グルンドフォスのアプローチは、設計・開発から生産、設置、メンテナンス、解体、リサイクルまで、ポンプの全ライフサイクルを見据えたiSolutions [インテリジェントソリューション] の哲学に基づいています。

「製品開発プロジェクトにエンドユーザーに関わってもらうことで、お客様の需要を確実に満たす最終製品を完成させることができます」ですが、デザインの改良を決める要素はそれだけではないとMikael Nedergaardは言います。例えば、お客様に十分に評価されていない問題の1つに、空気処理(図3を参照)があります。ポンプはある程度空気を含んだ流体にも対応できることが重要です。グルンドフォスでは、気体や空気を含む流体を取り扱う際にS-tube®インペラ内で起こる流量低下を軽減するために、重要エリアの最適化を目的とした大規模なCFD調査を実施しました。


5.概要

現代の廃水管理システムには、電力や輸送流体の消費量を減らしつつ、移送する廃水の容量や種類、距離を拡大できることが求められています。このような需要に応えるには、詰まりが起きづらく水力効率に優れ、さらに最小限のメンテナンスで長寿命を実現できるうず巻ポンプが必要です。21世紀のエンジニアリングとお客様からのフィードバックによって従来のチューブコンセプトを改良したS-tube®インペラは、まさに万能ソリューションです。

グルンドフォスは世界各国に17,000名の従業員を抱える世界最大のポンプメーカーです。ポンプユニット、循環ポンプ、浸漬型ポンプ、渦巻きポンプを年間1600万台以上生産しており、世界市場で50%以上のシェアを占めています。デンマークに本社をもつグルンドフォスではポンプ向け電動機のほか、そのほかの用途向け電動機も幅広く取り揃えています。また、制御装置やポンプ、そのほかのシステムに搭載する最先端の電子機器の開発も行っています。詳細は grundfos.com をご覧ください。

図 1:
廃水処理にかかるコストの増加により、世界中の水道光熱会社が廃水管理に対するアプローチを見直している。* ユーロ換算2014年4月14日時点 出典:GWI Water Tariff Survey – 2013 Update

図 2:
標準的な S-tube® の表面(そのほかの材質の追加なし)が受ける圧力を示したカラーコード画像。青色の部分は圧力が最も低く、流体がインペラ内を進むにつれて緑、黄色へと変化し、インペラを出る際に赤の部分で圧力が最高値に達する。このように圧力が徐々に高くなる設計により高効率と逆流が確保され固形物の沈殿が防止される。S-tube®インペラコンセプトには前縁がないため、チューブが最も湾曲している赤点部分においても固形物がひっかかるリスクはほぼない。

図 3:
この多相CFDシミュレーションでは形状がやや異なる(数mm以下)ほぼ同サイズの2つのインペラを使用した。流体の流量は同一とし、継続的に空気を8%混入した。赤い円は各インペラで気泡が蓄積している部分を示し、それぞれのデザインで空気処理を最適化するために修正すべき点を特定できる。